
作業療法
作業療法とは?
作業療法では上肢の機能訓練や、日常生活上の食事、整容、更衣、排泄、入浴動作など応用動作能力の拡大、さらに家事動作訓練や、住宅改修指導、職業前訓練などを行い社会復帰の援助をします。
作業療法士の役割
作業療法士は、心身に障害がある人やそれが予測される人に対して、作業活動を用いて、諸機能の回復、日常生活の自立に向けての訓練、指導を行うことです。診療を行う際には必ず医師による指示を受けて、対象となる人のリスクに配慮し住環境や身体の状態などを問診・評価を行なって開始します。
病院内での役割については発症からの時期・状態と特長的なことに分けて紹介します。
急性期
病気やけがの初期の段階で、全身状態の管理をする必要のある時期です。症状にあわせて心身の基本的な機能の改善を助けます。患者さんはベッド上で臥床することが多い時期ですので、寝たきりによる心身機能の低下(廃用症候群)を予防し、日常生活の自立に向けて寝返りや起き上がりなどの練習から行います。
[ベッドから起き上がる練習]
回復期
病気やけがの状態が安定して、心身機能や能力の改善がもっとも期待できる時期です。上肢を中心とした身体機能の向上、日常生活を自力で行っていくために不足している機能を改善し、人それぞれの生活に適応した方法を検討し、習得をしていく時期です。
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ベッドから車椅子への |
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様々な用具・機器を用いて行なう |
生活応用期
病気やけがをしてからその人に適した治療訓練を行い、人それぞれが生きがいを見つけて豊かに生きるための生活の実現を図る時期です。
心身機能や能力の改善や趣味活動として手工芸に取り組むこともあります。
日常生活動作訓練
住み慣れた自宅での自立した生活に復帰するために、取り組みます。リスクに配慮しながら、発症の初期から食事、整容、更衣、排泄、入浴動作練習などに取り組みます。必要があれば、入浴は担当のセラピストがついて浴室での安全性、更衣動作の自立度などの確認も行います。また、調理などの家事動作練習も行っています。
![]() 更衣動作の練習 |
![]() 調理動作の練習 |
住宅改修指導
段差の多い日本家屋で転倒などの事故を予防し、介護負担を軽減し、自立度・活動性を向上するために行います。建築の専門家は患者さんの機能状態が分からないのが困ると言われます。それに比べて毎日患者さんを診ているので、機能状態を考慮に入れた住宅設計について助言しやすい立場にあります。
[浴室の住宅改修指導 ]
福祉用具の選定
障害を受けた機能を補うために福祉用具があります。シャワー浴に使うシャワーキャリーや家屋の出入りに使う段差解消機などが最近では評判が良いように思います。住宅改修指導と合わせて、機能に適した器具の評価・紹介を行います。
簡単に紹介してきましたが、患者さんが自宅に戻って安全で生き生きとした生活が送れるように、地域医療のスタッフとも連携をとって取り組んでいます。
最近注目されている治療法
当センターでは随意運動介助型電気刺激装置(パスシステム)や脳の障害による麻痺に対する治療法としても注目され始めているミラー療法(Mirror Therapy)など新しい技術に日々取りくんでいるので紹介します。
随意運動介助型電気刺激装置(パスシステム)
随意運動介助型電気刺激装置(パスシステム)は特殊な電気刺激の装置で、麻痺した筋肉の微弱な活動を電極で感知し、その活動に応じた電気刺激を麻痺した筋肉に与える携帯型刺激装置です。従来の電気刺激装置とは違い、患者さんが自ら麻痺した筋肉を動かそうとした時に電気刺激が起こり筋肉の収縮が増大されます。筋肉を動かそうとしていない時にも弱い電気刺激を出して刺激された神経を通して脳に刺激をいれてくれます。患者さんにこのパスシステムと手首につける装具を一日8時間装着してもらい麻痺の回復に良い結果を残したという報告もされています。
ミラー療法(Mirror Therapy)
ミラー療法は、腕や脚の切断された方の、あるはずのない切断され失った部分の痛み(「幻肢痛」と呼ばれています)の治療として考案されたものですが、脳の障害による麻痺に対する治療法としても注目され始めています。脳の働きに基づいた治療法の一つとして、今後もさらに発展していくと思われます。当センターでも、よりミラー療法を活用できるように取り組んでいます。