筋肉注射により、脳卒中後の痙縮(筋肉が固くつっぱり動かしにくくなる現症)を改善させる治療法です。
ボトックスは、A型ボツリヌス毒素製剤を筋肉に注射することにより、脳卒中後遺症の痙縮(筋肉が固くつっぱり動かしにくくなる現象)を改善させ、関節運動を行いやすくする治療法です。当センターでは2012年8月よりこの治療を開始しました。
痙縮(けいしゅく)とは
脳卒中や頭部外傷でよくみられる運動(機能)障害の一つに痙縮という症状があります。痙縮とは筋肉が緊張しすぎて、手足が動きにくい、勝手に動いてしまう状態のことです。痙縮では、手指が握ったままとなり開こうとしても開きにくい、肘が曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられます。痙縮による姿勢異常が長く続くと、筋肉が固まって関節の運動が制限され(これを拘縮(こうしゅく)といいます)、日常生活動作のみならず生活の質にも支障が生じてしまいます。
ボトックスの成分
この薬は、ボツリヌス菌がつくり出すA型ボツリヌストキシンという天然のタンパク質を有効成分とする薬です。ボツリヌス菌を注射するわけではありませんので、ボツリヌス菌に感染するといった危険性はありません。様々な研究の結果、このタンパク質のごく少量を緊張している筋肉に直接注射すると、その筋肉がゆるみ、緊張や痙攣(けいれん)がおさまることがわかり、医薬品として利用されるようになりました。
ボトックス治療+集中的リハビリ
ボトックス治療は集中的リハビリとの併用で効果が上がるため、原則として入院で行っています。ボトックス注射は目的とする筋肉に確実に注入することが大切なため、当センターでは電気刺激装置を用いて目的とする筋肉を確認しながら注射を施行しています。入院の当日又は翌日にボトックス注射を施行し、その後集中的リハビリ訓練を開始します。入院期間は少なくとも2週間は必要と考えています。薬の効果は平均3~4ヶ月続くと言われていますが、個人差があります。
※治療ができるかどうかは担当医師の判断になります。
以下の項目に該当する方は治療を受けることができません
- 全身性の筋力の脱力を起こす病気がある方
(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症など)
ボツリヌス療法は、これらの病気を悪くすることがありますので、このような方は治療を受けられません。 - この薬を以前に使用し、発疹などのアレルギーを経験したことがある方や、アレルギー体質の方
- 喘息など慢性的な呼吸器の病気がある方
- 妊娠している方、妊娠している可能性のある方、授乳中の方
- 現在使用中の薬がある方
同時に使用できない薬があるため、使用中の薬は、市販薬を含め全て医師に申し出てください。特にアミノグリコンド系の抗生物質、パーキンソン病の治療薬、筋地緩薬、精神安定剤などの投与を受けている方は、医師に申し出て、指示に従ってください。これらの薬は、ボツリヌス療法と同時に使用すると、効果が強くあらわれることがあるため、十分な観察のもとで投与を行う必要があります。
医師の診察で適応を判断しますが、適応基準を満たしている方でも主治医の判断で実施しないことがあります。
現在、ボツリヌス療法を受けているか、過去にボツリヌス療法を受けたことがある場合(他の医療機関も含む)は、ボツリヌス療法を受けた疾患名、時期、投与量をお伝えください。
ボトックス治療を希望される方へ
ボトックス治療を希望される方は、専門外来の予約を取り受診して下さい。外来診療によりボトックス治療が可能かどうか判断いたします。
専門外来の予約については、鹿教湯病院内の地域医療連携課までお問い合わせ下さい。
鹿教湯病院 地域医療連携課(℡0268-44-2111 内線3131)
ボトックス治療の費用
ボトックス治療は入院・外来とも医療費が高額となりますので、70歳未満の方は事前に高額療養費制度の手続きをおすすめしております。また、加入されている健康保険の種類によって負担金額が異なります。